部屋に入ったとき、鉢植えが少し左にずれているのに気づいて、思わずつぶやいたことはない?
「誰がやったんだ?」
そう言ったあと、すぐに気づく。
「自分でやったに決まってるじゃないか」
いや、じゃない。今度こそ絶対ちがう。いまぼくにははっきりわかる。気をつけてみると、さわってもいない枕にしわが寄っている。読んだこともない本が、いつも同じページで開く。何年も壊れたままの時計が、いきなり動きだすこともある。この家にいる誰かの仕業にちがいない。
そして突然、ぼくはあいつの存在を感じる。