すいません、警察署はどこでしょうか?
警察署? ちょっとわからな・・・
あ、そう。それじゃ!
待って! ああ、警察署ね。もちろんわかるよ。あっちだ。
いっしょに行こう。もどっちみちそっちに行くところだから。
よかった。私、これから・・・
パンを買うからちょっと待って。
あの、道を教えてもらえれば・・・
おいしいんだ、ここの全粒パンが!
穀物やナッツなんかがいっぱい入ったパンが大好きでね。
きみはどう?
白パンのほうが好きなタイプ?
私、財布のことを・・・
待って。夕食用に野菜も買わなきゃ。カリフラワーにしようかな。いや、先週食べたばかりだ。
芽キャベツは、長いこと食べてないな。
・・・財布のことを届けでないと。
・・・それにジャガイモとレタス。
さあ、公園を歩いていこう。あそこの緑が大好きなんだ。
でも、それじゃあ・・・
鳥に花に樫の木。キツネもいるらしいよ。田舎に住めたらいいな。でも、何もかも手に入れるのは無理だね。都会でもいいや。もちろん、ヤク中や犯罪なんかには慣れる必要があるけど。でもここだと安心できる。
聞いて!
見て! アヒルだ! あいつらも全粒パンが大好きなんだ。エサをやる? あの大きいやつを見張ってて。いつだって全部取っちゃうんだ。よくばりめ。
私はただ・・・
ポニーを見たい? きみは馬が好きなタイプだと思ったよ。ここには大きな馬はいないけどね。小さいシェットランド・ポニーだけだ。でもすごくかわいいよ。あいつらもきっと全粒パンが好きなはずだよ。それともレタスかな。芽キャベツも好きかもしれない。
そうじゃないの!
ポニーはだめ? ほんというとぼくも嫌いなんだ。
実は以前・・・
違うの! ポニーもアヒルも見たくない。公園にも行かない。聞いて。私は警察署に行って財布の盗難届けを出したいだけなの。
でもぼくは・・・
だめ。
きみとぼくは・・・
だめ。
そう・・・ じゃわかった。警察署はあの通りのつきあたり、
左側だ。
ありがとう! 本当にごめんなさい。
あなたの気持ちはわかるけど・・・
いいんだ。急いでるんだね。
ええ、本当にありがとう!
さよなら。